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□くだらない理由
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夜になって、万事屋で神楽ちゃんと僕と銀さん三人で夕飯を食べ終えてから、僕は昼に話していたことを銀さんに聞いてみることにした。
銀さんはソファでジャンプを読みながらゴロゴロしていたので、その向かいのソファに座った。


「ねぇ銀さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「んー?」

「銀さんって貯金とかしてます?」

「貯金ン?バーカ、ンな金あったらもっといいもん食ってるだろ」


確かに、今日の夕飯はお茶漬けとメザシといういかにもじり貧メニューだった。
やっぱり僕の考えすぎだったのかなぁと思っていると、定春と遊んでいた神楽ちゃんが僕の隣に来た。


「ほらやっぱりヨ。銀ちゃんが貯金なんかできるワケ無いアル」

「おーい神楽ァ、なんだ『やっぱり』って。つーか何でそんな話になったわけ?」

「銀さんって、お金が入っても入らなくても質素な生活っぷりでしょう?だから貯金とかしてるんじゃないかって思ったんです」

「この前、雨漏り直したときたくさんお金貰ったのに、何アルか今日のご飯!
貯金してないならあの金は何に使ったアルか!?」

「別に、大人にはいろいろ金が必要なんだよ。
それに今日は豆に魚に米で栄養のバランスとれてるだろうが。知ってるか?大豆は畑の肉と言われててなぁ」

「そういうの聞きたいんじゃないアル」


銀さんと神楽ちゃんの冷戦を見ながら、やっぱり銀さんがいろいろ考えてお金貯めたりなんてしないか、と溜息をついた。
大人はお金が必要って、確かにその通りなんだろうけどさ。貯金もしていないなら、何万円もいったい何に使っているんだろう。
そんなに必要なのかな。くだらないことだったらどうしてくれようこの天パ。
そうだよ、ナチュラルにスルーしてたけど僕の給料だって何カ月も貰っていないじゃないか。
これは社員として使い道を聞かなくては。今月決まったお通ちゃんのコンサート代、けっこう高いんだよね。


「銀さん」

「今度は何だ」

「この前のお金もそうですけど、何万円も何に使ってるんです?僕、もう何か月も給料貰ってないんですけど」

「お前もたいがいしつこいねぇ。あれか、お前は俺の母ちゃんか。レシートいちいち見せろって?あーヤダヤダ、こうやって家庭は乱れてくんだよ」

「知らねーよ!何の話だよ!じゃなくてですね、おおまかにでも教えてくださいよ。どうせパチンコとかでしょうけど」

「違ぇよ、最近玉の出が悪ィから行ってねぇんだ」

「じゃあお酒アルか?」

「酒もまぁ、飲むけど。だいたいツケだしなぁ」

「それ何の解決にもなってませんけどね」

「分かったアル。女でしょ。マダオになる三カ条はギャンブル、酒、女って相場が決まってるアル」

「えー、神楽ちゃん、銀さんがそんな貢ぐような女の人いないでしょ。キャバクラとかならともかく」

「キャバクラはあり得ないネ。姐御この前言ってたアル、銀ちゃんは店に来てもビール一杯しか飲まない最悪な客だって」

「アイツそんなこと言ってたのかよ。無理やり同伴させられてたかられたあげくいつの間にかドンペリ注文してやがるくせに…」

「姉上、さすが商売上手…」

「で?銀ちゃん、どうアルか?」

「どうって?」

「だから、銀ちゃんのお金の使い道。女につぎ込んでるんでしょ?」


目をランランとさせた神楽ちゃんの顔には、いかにも楽しいと書かれている。
でも、その説は薄いんじゃないかなー。というのが僕の意見。
だって、一見だらしなさそうに見えて女の影なんて見たことないし。
もし仮にいたとしても、銀さんが女の人に自分の生活切り詰めてまでお金つぎ込むタイプには思えない。


「んー、そうだなぁ。アイツも一応、女っちゃ女か」


・・・へ?


「え?銀さん、本当に女の人につぎ込んでたんですか…?」

「つぎ込む…って訳じゃねぇけど。だいたいそんなもんだよ」



うわ、本当に?
隣では神楽ちゃんが予想が当たったと大はしゃぎしているが、僕は驚きのあまりポカンとしてしまった。
銀さんは「ハイこの話は終わり」と言って、またジャンプを広げてゴロゴロしだした。
それが不満な神楽ちゃんは「もっと詳しく教えるヨロシ」とつっかかっているが、ああなった銀さんはもう教えてはくれないだろう。

しかし、本当に女関係だったとは。
貯金もせず、貧しい食卓囲んで、女に貢ぐなんてまさしくマダオ。


なんてくだらない理由だったんだ。なんて、思ったんだ。







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